食品工場でできる省エネの方法について、電気、空調、水・熱の3つに分けて解説します。食品工場で使用する各種エネルギーは膨大です。少しでも省エネを心がけることで、コスト削減による収支バランスが改善する可能性があります。
全ての食品工場は、大規模な電気エネルギーによって稼働しています。少しでも食品工場運営のコストを削減するためには、電気における省エネに取り組むことが有効です。工場で取り組める具体的な省エネ方法を見てみましょう。
デマンド監視・デマンドコントローラーとは、簡単に言えば、工場全体の電力使用状況を「見える化」する装置のこと。パソコンやタブレットを通じ、工場内にある各設備の電力使用状況をリアルタイムで確認することができます。
電力の無駄使いを防ぐためには、現実の電力の使用状況と向き合うことが大切です。
電力が「見える化」されても、無駄な消費電力を抑える具体的な取り組みがなければ省エネにはつながりません。そこで有効となるシステムが、省エネ制御装置。周波数や電圧を適した状態に自動制御したり、設定した基準値を超えないよう電力消費量を自動制御したりするなど、人の手間をなくし自動的に省エネが実現できる装置です。
照明単体では大きな消費電力になりにくくても、食品工場のような大規模な施設となると、消費電力は格段に上がります。
少しでも照明設備の節電を実現するためには、白熱灯をLEDに替えることが有効。60Wの白熱灯をLEDに替えることにより、約85%の節電効果を得られると言われています。また、LEDは白熱灯よりも寿命が長いため、交換に要する消耗品費も削減できます。
もとより、こまめに照明を消すよう心掛けることも大切です。
三菱電機の省エネデータ収集サーバを活用し、各エネルギーの見える化を実現しました。消費電力のピークを分析することができ、工程全体で最適化を実現。電力だけでなく水道やガスの消費量も見える化できたため、各エネルギーの省エネを実現しています。
電力消費は5年で約1,000万円もの効果が得られ、コスト面でも大きなメリットが得られています。
SMART CLOCKを導入することで、電気の見える化・わかる化に成功しました。1年間データを検証し、傾向と対策を検討。2台ある電気オーブンの起動タイミングをずらすことで電力ピークの引き下げに成功しました。
また、消し忘れなどにも気づけるようになり、無駄な使用電力が削減できるようになりました。
製造工程で冷却能力増強が必要になった際、チラー装置の増設では二酸化炭素量が増えてしまう課題がありました。地中熱を利用するシステムを導入することで二酸化炭素の排出量削減に成功。既存の冷却システムに容易に組み込めたことで、投資コストを大きくかけることなく省エネを実現しました。
工場内の良好な労働環境を維持するため、また安全な食品を製造するため、食品工場では空調システムの完備が求められます。その膨大な消費電力を節約する方法として、具体的な対策を3つほど見てみましょう。
空調機の温度設定を変えることで大きな節電効果を得ることができますが、食品工場という性質上、あまり極端に温度設定を変えるわけにはいきません。
おすすめの方法は、通常よりも設定温度を1℃変えること。夏場は1℃だけ上げ、冬場は1℃だけ下げます。1℃程度であれば、従業員にとっても大きな体感の変化を感じにくいでしょう。
「1℃だけ変える」という方法でも、空調にかかる電気代の10%以上をカットすることができると言われています。
工場の壁や屋根に遮熱効果のある塗料を塗ることで、工場内の温度変化を緩やかにすることができます。冬は工場内の暖房で暖められた空気が逃げにくくなり、夏は工場内の冷房で冷やされた空気が逃げにくくなります。温度変化が小さくなれば、その分、空調の稼働を抑えることができるでしょう。
広い食品工場の場合には、必要な箇所に限定してビニールカーテンを下げることで空調効率を上げることができます。低コストで空調の節電を図ることができるおすすめの方法です。
工場に2階がある場合には、階段部分にビニールカーテンを下げることで、1階の空気が2階へと逃げていくのを防ぐことができます。
空調設備改善工事で年間冷房中温形(設定温度14~29度可能)の空調機を導入。20度以下の温度管理ができるようにしました。空調機のメンテナンス回数を減らすために、吸い込みフィルターを外側に追加しています。また、ステンレス台に空調機を乗せることで床が掃除しやすくなりました。
また、壁面断熱の改善工事を行ったことで断熱性が向上しただけでなく、壁面がきれいに仕上がりました。
空調設定温度を通年25℃で運用していたものを、夏に26℃、冬に22℃の設定とすることで電力使用量を大きく削減可能だと判明。また、空調を使用しない4か月について電源だけでなくブレーカーを落とすことによる待機電力が削減できることも分かりました。
省エネ最適化診断を実施することにより、エア配管の空気漏れや蒸気配管の蒸気漏れが確認でき、漏れ防止改善をすることで省エネを実現できることが判明しました。
省エネ対策として、空調設定温度の適性化や使わない空調の停止を実施していた企業です。総エネ最適化診断により、排気ファンへインバータを導入することで年間で97千円の電力消費量削減効果が期待できると判明しました。
冷凍食品工場では冷暖房のコストが膨大になっていました。水の気化熱により冷却する設備を導入することで、冷房能力に頼らない状態での環境改善が実現できました。また、冬には排熱を用いた暖房を行い、年間を通して省エネを実現。職場環境の改善にもなりました。
食品工場では、良質の水が大量に使用されます。また、冷熱・温熱の需要も膨大です。それぞれの使用量を少しでも抑える方法として、次の3つの対策を検討してみましょう。
食品工場内で使用される水を、同じ工場内で再利用するシステムが水のカスケードです。
たとえば、製造工程で使用された比較的きれいな水は、フィルターでろ過すれば再利用できるかもしれません。あるいは、製造工程に必要とされる水の純度をグレード化し、第1グレードで使用した水を第2グレードで使用し、第2グレードで使用した水を第3グレードで使用するなど、段階的に水を再利用することも可能です。
ガス会社の中には、利用者の求めに応じ、オンライン等を通じてガスの使用状況を報告するサービスを用意しているところもあります。単に使用量を報告するだけではなく、特にガスを多く使用している設備を計測・分析するサービスも付帯していることもあります。
ガスの使用量を見える化すれば、現場でのガス運用について見直すきっかけとなります。見える化されたデータをもとに作業工程を工夫すれば、工場全体のガス消費量を抑えられる可能性もあるでしょう。
電気設備やその他の設備と同様、ガス設備も老朽化すると、必要以上にエネルギーを消費することがあります。設備の規模や稼働状況に対してエネルギー消費が大きいと判断された場合には、節約に向けた設備投資として、省エネ仕様のガス設備に入れ替えることも検討しましょう。
都市ガスを利用している食品工場であれば、ガスコージェネレーションシステムを利用することで、一定の省エネ効果を得ることができます。
ヤマモリ株式会社・株式会社ジャストエンジニアリング・三浦工業株式会社と共同で省エネに対する取り組みを実施。ヤマモリ松坂工場では熱回収式電動エアコンプレッサの導入によってボイラにかかる燃料削減に成功しました。二酸化炭素の排出量を年間で138t削減できただけでなく、夏場のオーバーヒート対策にもなっています。
ボイラーの排熱を利用することにより、給水加温燃料の削減に成功しました。ボイラーの排熱を利用することで年間45.5tの二酸化炭素排出量削減を達成しました。
食品工場では、照明をLEDに替えたり空調の温度設定を調整したりなど、わずかな努力だけでも大きな省エネ効果が期待できます。
食品工場は多くのエネルギーが必要となる施設なので、できる限りの努力と設備の見直しをし、少しでも無駄なエネルギーを消費しないよう、足元からできる対策を検討していきましょう。
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