食品工場における製造プロセスでは、多くの廃水が生じます。中には、そのままの状態で外部へ流出させることができず、工場内に設置した排水処理装置での浄化が必要となることも少なくありません。
当然、排水処理装置にはイニシャルコストとランニングコストがかかりますが、これらのコストで工場運営が圧迫されては本末転倒。排水性能とコスト面においてバランスの取れた排水処理装置を導入する必要があるでしょう。
ここでは、食品工場の排水処理に関する概要、主に導入されている排水処理装置、昨今注目されている排水リサイクル装置などについて詳しく解説しています。
食品工場から排出される廃水・排水は、常に質も量も一定というわけではありません。製造する製品の種類や製造方法が変化すれば、当然ながら廃水の質や排水量は変わります。
例えば、惣菜製造工場や飲料製造工場では、同じ工場内でも時期によって製造するモノが変わります。製造するモノが変われば、廃水の質も排水量も大きく変わることは容易に想像できるでしょう。
また、食品工場から排出される廃水は、油分、BOD(有機物の分解に必要な酸素量)、SS(廃水に懸濁している不溶性物質)の値が高く腐敗しやすいため、廃水処理を行う際には、事前に油分や固形物の前処理を適切に行っておくことが重要となります。
これらの処理を全て行うためには、相応のコストがかかることも承知しておかなければなりません。
食品工場の排水には様々なタイプがあるため、それぞれに応じた排水処理を行う必要があります。これら多岐にわたる排水処理の効率化を目指し、業界や学会では様々な処理技術の研究・開発が行われてきました。
以下では、食品工場をはじめ様々な工場で導入が進んでいる主な排水処理技術について確認してみましょう。
嫌気性処理とは、処理に酸素が必要となる好気性微生物だけではなく、酸素を必要としない嫌気性微生物の処理も行える理論・技術をいいます。
近年注目されている嫌気性処理は、メタンガスの発生を伴う嫌気性処理です。酸素が不要、メタンガスの回収が可能、余剰汚泥の減少が特徴で、それぞれ省エネ・創エネ・省廃棄物という3つのメリットをもたらす画期的な処理法です。有機物は、メタンガスと炭酸に分解されます。
この嫌気性処理を高負荷で行う技術が、高負荷型嫌気性処理です。高負荷型にすることで、CO2の排出量を大幅に削減できるメリットも確認されています。
膜分離活性汚泥法とは、食品工場などからの排水の浄化を行う活性汚泥法の一種です。
従来型の活性汚泥法は、処理水と活性汚泥の分離に際し、沈殿池(沈殿層)を必要としました。しかしながら、この従来法の場合、処理状況により効率が左右されるなど、安定的な廃水処理が行えないという弱点もありました。
この弱点を克服すべく開発された処理法が、膜分離活性汚泥法。従来の沈殿池(沈殿槽)に代え、精密ろ過膜または限外ろ過膜を採用した新しい処理法です。
従来型の活性汚泥法に比べ、処理効率の安定性向上だけではなく、設備のコンパクト化やバルキングによる分離不良の解消、消毒不要で再利用できる処理水の精製など、様々なメリットが生まれました。
流動式生物担体法とは、担体に付着している好気性微生物の働きを利用し、効率的に排水を処理する方法です。
多種多様な好気性微生物が付着した担体を流動せせることで、好気性微生物と酸素・排水の接触効率・酸素供給率を向上させ、高負荷処理を可能とする排水処理法になります。
汚泥を返送する必要がないため、煩雑な汚泥管理は不要です。担体は荒いスクリーンでも分離可能なため、日頃のメンテナンスには大きな手間がかかりません。
食品工場のほか、化学系工場や紙・パルプ系工場の排水などにも活用可能です。
生物膜ろ過装置とは、ろ過層に酸素を供給しながら排水を通過させる装置です。
酸素が供給された排水中では、好気性微生物が増殖します。ろ過材の表面に生物膜が形成され、この生物膜により排水中の有機物質が分解・除去される仕組みです。同時に、ろ過機能により懸濁物質も除去されます。
従来型の活性汚泥法に比べ、返送汚泥が生じないこと、バルキングが発生しないこと、複雑な汚泥処理が不要になること、動力費が削減させることなど、様々なメリットが認められます。
食品工場の排水処理においては、主に上記で説明した技術が導入されています。
一方で、全く新しい発想の排水処理装置として、食品工場の洗浄排水をリサイクルする技術も誕生しています。例えば、カット野菜の排水を生産ラインへ再利用できる状態にする技術などです。
あらゆる業界へSDGsが急速に浸透している中、食品工場として注目すべき技術ではないでしょうか。同技術について簡単に確認しておきましょう。
食品工場における洗浄水リサイクル装置とは、文字通り、食品の加工工程で生じた排水を再利用できる状態に精製するろ過装置のことです。食品工場で生じた排水を、主に生産ラインで再利用できる状態まで浄化します。
このタイプの装置として一躍有名になったのが、優秀環境装置表彰(2020年)と発明大賞本賞(2021年)を受賞した高精度水処理再生装置「ECOクリーン」です。食品工場で生じた排水はもちろんのこと、工業用水や河川水の濁度も水道水レベルまで浄化することが可能です。ろ過膜がプリーツ形状なので、設置のための大きなスペースを必要としません。
食品工場での排水処理にいては、使い捨てフィルターが目詰まりを起こしやすく、交換コストや手間がかかりがちです。中空糸膜設備は高額なので、導入に躊躇する現場もあるでしょう。
排水を再利用できるのでしたら、これらのコスト削減に大きく貢献します。エコにもつながることから、SDGsの理念とも合致します。排水の再利用をアピールすることで、企業のイメージアップにも貢献することでしょう。
食品工場で導入されている主な排水処理技術、および、新しい発想から生まれた洗浄水リサイクル装置についてご紹介しました。
食品工場の排水処理装置を導入する際には、排水の種類や性質、量などに応じた適切な装置を導入することが大切です。一方で、営利企業としてコスト削減や企業のイメージアップを図ることも大切です。洗浄水リサイクル装置の検討も視野に入れつつ、現場に適切な排水処理装置を導入していきましょう。
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